受賞者紹介 (第2回受賞当時)
Kids Loco Project
 ■ プロフィール
Kids Loco Project

Kids Loco Project
平成19年にびわこ学園医療福祉センター草津職員と滋賀県立大学工学部システム工学科職員等で構成された団体で、身体に不自由を持つ子どもたちに適した移動機器(電動車いす)の開発チーム。この開発によって、多くの子どもと家族の笑顔を引き出し、子どもたちの主体性や有能性、肯定感を育むことを行ってきた。
 ■ 主な活動実績(推薦書より)
赤ちゃんは世界を探検する存在であり、探検(探索行動)による発見は、脳に多大な報酬をもたらし、次の探検への基盤になる。しかし、身体に不自由のある子どもたちは、自らの行動によって環境に働きかけることができない。Butlerは20~36カ月の乳児であっても電動移動機器を用いての移動は可能であると報告している。
主体的に動くことにより自立度は高まり、無力感の軽減、社会性や情緒、認知発達の機会が促されることもわかってきた。
平成16年、幼少期の移動経験を実現するため、様々な姿勢で乗ることが可能なMultilocomotorとPCSS(体重の免荷と姿勢制御をサポートするための機器)を研究開発した。
姿勢制御機器・移動機器を利用する中で、子どもたちは環境に対して積極的に探索を始め、運動障害の変化よりも早く人との関係性が豊かに育まれていく様を目の当たりにした。
平成19年、滋賀県立大学工学部システム工学科と更なる機器開発と支援方法を確立するため、新たなプロジェクトとしてKids Loco Projectを開始。
  平成20年、三菱財団より、「重度脳性まひ児に対し早期移動経験を行うことで育まれる、認知・社会面の発達を通し、新たな援助・支援方法を研究する」で助成金を得た。本研究の成果は、平成20年日本赤ちゃん学会自主シンポジウム、平成23年リハビリテーション工学カンファレンスで発表、平成24年のリハビリテーション・エンジニアリングに「幼少期に電動移動遊具を与えることで起きる変化」を投稿した。
  平成24年、(公財)ダイトロン福祉財団第11回障害者福祉助成金を得て開発したKids Loco2台を購入し、貸し出しを行っている。
 ■ 今後の展望等(推薦書より)
身体に不自由のある子どもたちも、自らの行動で世界を探検することにより、健全な心身が育まれる。
我が国では、電動移動機器が給付される年齢は欧米の3歳に比べ10歳と7年も遅れている。その理由は、「幼児は大人の言うことに従えない、機器の操作を行うためには一定の安全への配慮が出来る知的な能力が必要」などが言われているが根拠に欠ける。スエーデンの研究では生後3カ月10日の乳児が電動車いすを操作した事例や7カ月の障害児が電動車いす操作を練習することで、認知・社会性の発達が同年齢の健常児より上回ったという報告もある。これは障害児に対する考え方の違いで、文化の差としか言いようがない。
当プロジェクトでは、幼児期から安全に乗ることが出来る移動機器を開発し、提供することで我が国の文化を変えていくことを目指している。子どもたちの笑顔を引き出しながら身体に不自由のある子どもと家族が、主体的に社会とかかわれる役割の一つとして今後とも活動を続けていく。